「屍者の帝国」

皆様、ごきげんよう。寒さは続いていますが、元気でしょうか。

 

今回は伊藤計劃の「屍者の帝国」について書く。

簡単に作品の紹介から。この小説は伊藤計劃がプロットの段階で筆を折った作品を彼の友人である円城塔が引き継いで書き上げたという作品だ。

当初、伊藤計劃が物語の途中で筆を折ったと勘違いしていた私は伊藤計劃の部分と円城塔の部分の継ぎ目を探すように読んでいたのだがあとがきで円城塔が全て文字を起こしたことを知り、ささやかな努力は水泡に帰した。

この小説は架空の歴史を舞台に繰り広げられるSFだ。イギリスで医者をしているホームズの相棒になる前のワトソンを主人公に死者を自由に操ることができるようになった社会を描いている。ここまでではB級映画によくあるゾンビの設定と大差はないだろう。ゾンビというのチープさは一切感じない。伊藤計劃の人間の身体に関する考え方と円城塔の言語に関する考え方が混ざり合った重厚なSFである。

僕は実のところ円城塔の面白さを理解する境地には達せていない。「虐殺器官」、「ハーモニー」の時とは違って文章が重たく読みにくいと感じてしまった。固有名詞の多さや世界史を勉強していたにも関わらず歴史的背景をつかみとることができずに読み切るのがやっとだった。文字を辿るだけで内容を把握していないところも十分にある。

もう一度時間をかけて読んでみたいと思える作品に出会えただけでもいいとしよう。